住宅ローン完済おめでとうございます!長年の負担から解放され、大きな達成感を味わっていることでしょう。
しかし、手続きはこれで終わりではありません。住宅ローン完済後に必ず行う必要があるのが「抵当権抹消登記」です。
「抵当権抹消登記」とは、住宅ローン完済によって不動産に設定されていた抵当権の登記を抹消する手続きを指します。
この手続きは、将来、不動産を売却したり、新たに融資を受けたりする際に必要となるだけでなく、円滑な相続のためにも重要な手続きです。
まず、不動産に抵当権が登記されているかどうかを確認しましょう。
抵当権設定登記の有無は、法務局などで取得できる登記簿謄本の「乙区」という欄で確認することができます。
抵当権抹消登記は、司法書士に依頼するのが一般的ですが、時間と費用を抑えるためにご自身で手続きを行うことも可能です。
ご自身で手続きを行う場合でも、専門家に依頼する場合でも、スムーズな手続きのために、事前に必要な書類や手続きの流れを把握しておくことが大切です。
本記事では、抵当権抹消手続きの詳細な方法、必要書類、注意点などをまとめました。
抵当権抹消登記が必要となるケース
抵当権は、住宅ローンなどの借入金を返済できなくなった場合、その不動産を売却して返済に充てる権利を金融機関などに与えるものです。
抵当権抹消登記は、住宅ローン完済時に行うのが通常です。
もし債務を完済したのに抵当権抹消登記を行っていなかった場合でも、以下の時点で手続が必要となります。
不動産売却時
不動産を売却する際には、買主が安心して購入できるよう、抵当権を抹消しておく必要があります。
抵当権が付いたままでは、売却が難航したり、価格が下がってしまう可能性があります。
新たに融資を受ける時
住宅ローンの借り換えや、新たに不動産担保ローンを利用する場合、抵当権を抹消しておく必要があります。
既存の抵当権が残っていると、新たな融資が受けられない場合があります。
相続するケース
不動産を相続する場合、被相続人に抵当権が残っていると、相続手続きが複雑になる可能性があります。
相続登記と同時に抵当権抹消登記を行うことで、後のトラブルを避けることができます。
なお、被相続人が団体信用生命保険(団信)に加入していれば、死亡時に保険金でローンが完済され、相続人は不動産を抵当権なしで相続できます。
団信とは、住宅ローン契約時に加入する保険で、契約者が死亡または高度障害状態になった場合に保険金が支払われ、住宅ローンの残債が免除されるものです。
団信に加入していない場合、相続人は残債を含めて相続するか、相続放棄をするかを選択しなければなりません。
相続する場合は、自身でローンを返済していく必要があります。相続放棄は、家庭裁判所への手続きが必要です。
抵当権抹消登記の方法: 専門家への依頼と自分で手続きする場合
抵当権抹消登記は、専門家に依頼する方法と、自分で手続きを行う方法の2つがあります。
専門家に依頼する場合
登記の専門職である司法書士に依頼する場合、手続きをスムーズに進めることができ、時間や手間を大幅に削減できます。
専門家に依頼するメリットは以下の点が挙げられます。
手続きの確実性
専門家は、豊富な知識と経験に基づいて、手続きを正確かつ迅速に行ってくれます。
時間と労力の節約
自分で手続きを行う場合は、書類収集や役所への手続きなど、多くの時間と労力が必要です。専門家に依頼すれば、これらの負担を軽減できます。
安心感
不動産登記は、専門的な知識が必要な手続きです。専門家に依頼することで、手続きが適切に行われるという安心感を得られます。
専門家に依頼する場合、費用は数万円程度が相場です。
ただし、司法書士によって費用は異なるため、事前に見積もりを取得し検討することをおすすめします。
自分で手続きを行う場合
自分で手続きを行う場合は、費用を抑えることができますが、書類の準備や法務局への手続きなど、多くの時間と手間がかかります。
自分で手続きを行うメリットは、費用を抑えられるという点です。
しかし、手続きには専門的な知識が必要となる場合もあり、誤った手続きをしてしまうと、余計な時間や費用がかかってしまう可能性もあるため注意が必要です。
抵当権抹消登記に必要な書類
抵当権抹消登記に必要な書類は以下の通りです。
委任状:司法書士に手続きを依頼する際に委任状が必要となります。
本人確認書類:運転免許証やパスポートなど、本人確認書類のコピーが必要です。
登記済証(もしくは登記識別情報通知):金融機関が管理していた抵当権設定登記時の登記済証(もしくは登記識別情報通知)を受け取ります。
登記申請書:法務局に提出する申請書です。法務局のウェブサイトからダウンロードできます。
抵当権抹消証書(解除証書等):住宅ローンの完済を証明する書類です。金融機関から発行してもらいましょう。
収入印紙:登録免許税として、不動産1筆につき1,000円分の収入印紙が必要です。
抵当権者(金融機関等)の資格証明書:金融機関の代表者や資格などを証明するもので、「代表者事項証明書」「現在事項全部証明書」「履歴事項全部証明書」「商業登記簿謄本」などがあります。
その他:上記の書類に加え、場合によっては住民票や印鑑証明書など、追加の書類が必要になる場合があります。
抵当権抹消登記の手続きの流れ
抵当権抹消登記の手続きの流れは以下の通りです。
- 必要書類の準備:上記で紹介した必要書類を準備します。
- 法務局への申請:必要書類を揃えて、法務局に申請します。
- 登記の完了:申請後、法務局の審査を経て、抵当権抹消登記が完了します。
手続きにかかる期間は、通常1〜2週間程度です。
ただし、書類に不備があった場合や、法務局の混雑状況によっては、さらに時間がかかる場合があります。
抵当権抹消登記を怠っていた場合はどうなる?
もし残債務を完済したのに抵当権抹消登記を怠っていた場合、以下のようなデメリットがあります。
不動産を売却するときに困る
不動産を売却する際、抵当権の存在は大きな影響を及ぼします。
抵当権とは、住宅ローンなどの借入金を返済できなくなった場合、債権者がその不動産を差し押さえ、売却して債権の回収を図ることができる権利のことです。
そのため、抵当権が設定されたままの不動産は、売却が難航する可能性があります。
なぜなら、買い手にとって、いつ債権者に差し押さえられるか分からない不動産は大きなリスクとなるからです。
買主は、抵当権のついていない、つまり第三者の権利が何も設定されていない、きれいな状態の不動産の購入を希望します。
仮に購入希望者が見つかったとしても、抵当権は住宅ローン審査における大きな障壁となります。
金融機関は、抵当権付きの不動産に対しては、融資のリスクが高いと判断し、ローン審査を否決する可能性が高くなります。
そのため、不動産をスムーズに売却するためには、事前に抵当権を抹消しておくことが重要となります。
新たに融資を受けるときに困る
住宅ローンを完済した後も、新たに融資を受けたりする可能性を考慮すると、抵当権の抹消は非常に重要な手続きとなります。
例えば、住宅ローンとは別に、同じ不動産を担保として新たに融資を受けたい場合を考えてみましょう。
この場合、既に住宅ローンの抵当権が残っていると、新たな融資の審査に影響を及ぼす可能性があります。
金融機関は、既に抵当権が設定されている不動産に対して、二重に抵当権を設定することを嫌う傾向があるためです。
そのため、審査に通らなかったり、希望する金額の融資を受けられなかったりする可能性も出てきます。
また、住宅ローンを完済していても、抵当権抹消の手続きを忘れてしまっている場合、その証明に思わぬ時間がかかってしまうことがあります。
金融機関によっては、書類の再発行に時間がかかる場合もあり、融資の手続きが滞ってしまう可能性も考えられます。
相続時に困る
相続する不動産に抵当権が残っていると、その後の手続きが複雑になるなど、相続がスムーズに進まない可能性があります。
抵当権付きの不動産を相続する場合、相続登記と抵当権抹消手続きが必要になります。
まず、相続登記を行い、不動産の所有権を被相続人から相続人へ移転します。その後、抵当権抹消の手続きを行います。
抵当権抹消の手続きは、金融機関とのやり取りや必要書類の準備など煩雑な場合があり、相続人が複数いる場合は誰が手続を行うかで揉める可能性があります。
司法書士などの専門家に依頼することも検討しましょう。
抵当権抹消登記の注意点(住所や氏名の変更などがあった場合)
引越しや結婚を機に、所有者の情報変更が必要になるケースがあります。
登記簿の情報は常に最新の状態にしておく必要があり、住所や氏名の変更が生じた場合は、抵当権抹消登記と併せて変更登記申請を行いましょう。
住所変更の場合、必要な書類は、転居の経緯が分かる住民票と住所変更登記申請書です。申請書は法務局のウェブサイトからダウンロードできます。
氏名変更の場合は、戸籍謄本と本籍が記載された住民票が必要となります。このように、変更内容によって必要書類が異なるため、注意が必要です。
例えば、結婚によって氏名が変わった場合、戸籍謄本によって旧姓と新姓のつながりを証明します。
また、住所変更と氏名変更が同時に発生する場合は、両方の変更に必要な書類を揃えなければなりません。
抵当権抹消登記についてのまとめ
抵当権抹消登記は、住宅ローン完済後、不動産を売却する、新たに融資を受ける、相続などの手続きをスムーズに行うために非常に重要な手続きです。
専門家に依頼すると費用はかかりますが、確実かつスムーズに手続きを進めることができます。
自分で手続きを行う場合は、時間と手間はかかりますが、費用を抑えることができます。
どちらの方法で手続きを行う場合でも、事前に流れや必要書類を確認し、スムーズに手続きを進められるように準備しておきましょう。