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不動産登記における一括申請の可否について(抵当権・根抵当権関係)

不動産登記における一括申請の可否(抵当権・根抵当権関係)について、先例・登記研究・登記実務の情報を整理しました。

登記にかかわる方の参考になりましたら幸いです。

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先例(通達・回答・依命通知等)

(根)抵当権設定

  • 同一の債務を担保するため、所有者を同じくし又は異にする2個以上の不動産について、抵当権設定契約の日付けが異なる場合でも、当該抵当権の設定は、便宜、同一の申請書で申請して差し支えない(昭和39年3月7日民事甲第588号)。

(根)抵当権変更・更正

  • 所有者を異にする数個の不動産を共同担保とする抵当権の変更・更正の登記は、同一の申請書によって申請することができる(昭和41年4月21日民甲1119局長通達)。

  • 順位変更の登記の申請は、不動産ごとに各別の申請書によるべきであるが、共同担保の場合、各不動産についての順位変更にかかる抵当権の順位番号及び変更後の順位がまったく同一であるときは、同一の申請書ですることができる(昭和46年12月27日民三第960号第三課長依命通知)。

(根)抵当権移転

  • 同一不動産の上に抵当権者甲のための抵当権の設定の登記が複数なされている。甲が死亡したため、その相続人乙が、相続を原因とする抵当権の移転の登記を申請する場合、同一の申請書ですることができる(昭和10年9月16日民事甲946号民事局長回答参照)。

  • 取得の原因及び内容が異なる多数の抵当権の移転登記は、その移転原因及び目的が同一であれば、同一の申請書によりすることができる(昭和28年4月6日民事甲第547号民事局長通達)。

(根)抵当権抹消

  • 数個の不動産を目的とする根抵当権設定(累積式)の仮登記の申請については、同一の申請書による申請はすることができない(昭和48年12月17日民三第9170局長回答)。

登記研究

(根)抵当権設定

  • 土地及びその土地上の地上権を共同担保とする抵当権の設定は、同一の申請書ですることができる(登記研究第177号73頁)。

  • 数個の不動産について、同一の債権を担保するために、根抵当権設定契約をして根抵当権設定の仮登記(累積的)をし、さらに追加設定契約に基づく仮登記をした場合、これらの仮登記の本登記を「共同根抵当権設定」の本登記とする場合には、便宜、同一の申請書で申請することができる(登記研究第527号173頁)。

(根)抵当権変更・更正

  • 同一の不動産上の抵当権者を同じくする数個の抵当権の登記について、同一申請書により登記名義人の表示変更の登記を申請することができる(登記研究第286号77頁)。

  • 根抵当権の債務者の氏名の更正及び住所の変更による変更・更正登記は、便宜、同一の申請書で申請することができる(登記研究第413号96頁)。

  • 所有者を異にする共同(根)抵当権の変更登記の申請を同一の申請書で申請することができる(登記研究第427号103頁)。

  • 同一の変更契約による根抵当権の極度額の増額と債務者の交替的変更および債権の範囲の変更の登記は、同一の申請書で一括申請することができる(登記研究第451号126頁)。

(根)抵当権移転

  • A・B2個の物件を共同担保として各々債権額の異なる甲・乙2つの抵当権を有する抵当権者(会社)が、合併を登記原因として両抵当権の移転登記を同一申請書で申請する場合の登録免許税額は、各々の抵当権の債権額に応じて計算した金額の合計金額である(登記研究第370号)。

(根)抵当権抹消

  • 甲が、A不動産につき(X債務担保の)乙名義の抵当権設定登記をし、次いで、同一登記所の管轄に属するB不動産につき(Y債務担保の)乙名義の抵当権設定登記を行った。これら被担保債務(X・Y両債務)の全部を同時に弁済したようなときは、同一の申請書により、前記二個の抵当権抹消登記を一括申請することができる(登記研究第367号135頁)。

  • 同一不動産上に設定された債権者を同じくする数個の抵当権の登記の抹消を申請する場合、登記原因及びその日付が同一であるときは、同一の申請書ですることができ、その場合に納付すべき登録免許税額は1,000円で足りる(登記研究第401号162頁)。

  • 同一不動産上に設定された債務者を同じくし、抵当権者を異にする数個の抵当権の登記の抹消を申請する場合、登記原因及びその日付が同一(形式的に)であっても、同一の申請書ですることはできない(登記研究第421号)。

  • 1個の不動産につき同一の権利者のためにされた数個の抵当権及び根抵当権の設定の登記を抹消する場合において、抹消の原因及びその日付が同一であれば、同一の申請書で抹消の登記を申請することができる(登記研究第434号)。

  • 甲所有のA・B物件を共同担保として抵当権設定の登記をした後、B物件について乙に所有権移転の登記がされている場合であっても、当該抵当権の抹消を同一の申請書で申請することができる(登記研究第558号)。

  • 抵当権と根抵当権の抹消登記は、登記の原因及びその日付、権利者と義務者が同一であれば同一申請書で申請することができる(登記研究第564号69頁)。

  • 設定者を異にする根抵当権設定仮登記の抹消の申請は、同一の申請書で申請することはできない(登記研究第594号)。

登記実務

(根)抵当権変更

  • 同一不動産に同一抵当権者が数個の抵当権を設定している場合、本店移転した場合、抵当権登記名義人表示変更登記は同一申請書ですることができる。

  • 根抵当権の複数の債務者が日を異にして住所移転した場合でも、同一の申請書で変更登記を申請することができる。

    (根)抵当権抹消

    • 所有者を異にする共同(根)抵当権についての抹消登記でも、登記原因が同一であれば、同一の申請書で申請できる。
    • 同一不動産に同一抵当権者が複数の抵当権を設定している場合、同一原因による抹消登記は1通の申請書で申請可能。
      → 記載例:「第〇番、第〇番抵当権抹消」や「抵当権抹消(順位番号後記のとおり)」
    • 追加担保物件を含む抵当権の抹消でも、一括での申請が可能。
    • 共同担保とされている複数不動産のうち、所有者が異なる場合でも、両所有者が連名で申請人となれば、同一申請書での申請が可能。

    根抵当権元本確定

    • 所有者を異にする共同根抵当権について元本確定登記をする場合でも、同一の申請書で申請が可能。

    一括申請が可能となる判断要素

    • 登記原因およびその日付が同一であること
      → 例えば、同日に同一の弁済により複数物件の抵当権を抹消する場合など。
    • 権利者・義務者が同一であること
      → 複数の登記対象物件に関与する当事者がすべて一致している場合。
    • 登記目的が同じであること
      → すべて「抵当権抹消」「根抵当権変更」など目的が統一されている必要があります。
    • 同一登記所の管轄内であること
      → 複数の登記所にまたがる場合は別々の申請が必要です。

    まとめ

    不動産登記における一括申請の可否は、登記の目的や構成要件によって細かく異なります。
    先例や登記研究の内容を踏まえ、合理的かつ適法に申請を組み立てることが重要です。

    申請実務に迷いがある場合や複雑な事案では、法務局への事前相談や専門家の助言を受けることをおすすめします。

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