みなさん、こんにちは。司法書士の今井です。
今日は「葬儀・納骨・遺品整理。死後事務契約でできること」というテーマでお話しします。
70代のおひとりさまから、よくこんなご相談をいただきます。
「もし私が亡くなったら、葬儀や納骨は誰がしてくれるんでしょうか?」
「住んでいた家や荷物は、どうなるんでしょうか?」
身近に頼れる家族がいないと、この点はとても大きな不安ですよね。
そんなときに役立つのが 死後事務委任契約(しごじむいにんけいやく) です。
死後事務委任契約とは、自分が亡くなった後に必要な事務手続きを、信頼できる人や専門家にお願いしておく契約のことです。
遺言書が「財産の分け方」を決めるものだとすれば、死後事務契約は「生活に関わる手続き」を任せる仕組みだと考えるとわかりやすいでしょう。
ここからは、死後事務契約でできる具体的なことを3つに分けてご紹介します。
葬儀や火葬の手続き
1つ目は葬儀や火葬の手続きです。
亡くなった直後に必ず必要になるのが葬儀や火葬です。
病院で亡くなった場合、まずは遺体の搬送手続きから始まります。
その後、葬儀社との打ち合わせ、火葬の予約、役所への死亡届の提出と、やるべきことはたくさんあります。
家族がいれば自然と誰かが対応しますが、おひとりさまの場合は対応してくれる人がいないため、葬儀が遅れてしまうこともあります。
死後事務契約を結んでおけば、指定した人がすぐに動いてくれるので安心です。
また、自分の希望に沿った形で葬儀をしてもらえるのも大きなメリットです。
たとえば「家族葬で静かに送りたい」「葬儀はせずに火葬だけでいい」「音楽葬にしてほしい」といった希望も事前に伝えることができます。
納骨やお墓に関すること
2つ目は納骨やお墓に関することです.
葬儀の後に必ず考える必要があるのが、遺骨の行き先です。
伝統的には先祖代々のお墓に納めるのが一般的でしたが、おひとりさまの場合は「お墓を守る人がいない」という問題が生じます。
そのため最近は、永代供養や合同墓に納める方が増えています。
あるいは「散骨をして自然に還りたい」と希望される方も少なくありません。
死後事務契約を結んでおけば、こうした希望をあらかじめ決めておくことができます。
「誰にお願いするか」ではなく「どうしてほしいか」を明確に伝えられるのは、大きな安心につながります。
遺品整理や住まいの片付け
もうひとつ大きな問題が遺品整理です。
衣類や家具、家電、思い出の品々。誰かが整理しなければ、そのまま残ってしまいます。
特に賃貸住宅に住んでいる方は、早めに部屋を明け渡さないと家賃がかかり続けてしまいます。
また、公共料金や医療費の精算も必要になります。
死後事務契約を結んでおけば、こうした遺品整理や住まいの片付けを速やかに行ってもらうことができます。
信頼できる専門家に任せることで、不用品の処分や必要な清算もきちんと対応できます。
死後事務委任契約の注意点
注意していただきたいこともあります。
死後事務契約は、遺言書とは違って「亡くなったあとの生活の後始末」に特化した契約です。
遺言書がなければ財産の分け方は決められませんし、死後事務契約がなければ葬儀や納骨はスムーズに進みません。
ですので、両方を用意しておくことが望ましいです。
また、契約を結ぶ際には「誰に任せるか」がとても重要です。
信頼できる友人にお願いすることもできますが、専門職に依頼することで確実に実行される安心感が得られます。
今日のポイントを整理します。
死後事務契約を結んでおけば――
- 葬儀や火葬を自分の希望通りに行ってもらえる
- 納骨や供養の方法をあらかじめ決めておける
- 遺品整理や住まいの片付けを任せられる
おひとりさまにとって「亡くなったあとの不安」を解消する大切な契約です。
準備しておくことで、安心して今の暮らしを続けることができます。