こんにちは。司法書士の今井康介です。
今回は、不動産登記の中でも少し複雑な「仮登記の抹消」についてお話しします。
特に、「本来は共同で申請すべきものなのに、相手が協力してくれない…」という場面で使える “単独申請” の方法に焦点を当てます。
◆ 仮登記ってそもそも何?
仮登記とは、不動産の権利関係について 最終的な登記(本登記)をする前に、優先的な権利があることを公示しておくための登記 です。
たとえば、不動産の売買契約を結んだものの、代金の支払いなどが完了していない段階で「所有権移転請求権仮登記」を入れておくことで、第三者に対する権利の主張ができるようになります。
◆ 仮登記はどうやって消すの?
仮登記は、その目的が達成されたり、契約が解除されたりした場合には、抹消する必要があります。
ただ、仮登記の抹消は原則として「仮登記の名義人」と「その相手方(義務者)」の 共同申請 によって行います。
しかし実務では、「相手が協力してくれない」「連絡がつかない」「登記済証を紛失している」といった問題も。
そんなときに使えるのが、単独での抹消申請という方法です。
◆ 仮登記抹消の3つのパターン
パターン①:名義人と義務者の共同申請(原則)
最も一般的な方法で、双方が協力して法務局に申請します。
パターン②:仮登記名義人からの単独申請
仮登記が不要になった場合、名義人自身が単独で抹消申請することも可能です。
この場合、登記済証(または登記識別情報)や印鑑証明書が必要になります。
パターン③:仮登記義務者(相手方)からの単独申請
ここが今回のポイントです。
仮登記義務者が、名義人の「承諾書(印鑑証明書付き)」を添付して、単独で抹消申請をすることが認められています。
◆ なぜ単独申請が認められるの?
仮登記が残っていることで、不動産の売却や担保設定ができない…という不利益があるため、
相手から承諾があれば、単独で抹消することが合理的とされています。
◆ 登記研究における見解(少し専門的なお話)
- 登研343号・461号: 承諾書があれば、登記済証の添付なく仮登記義務者から単独申請可能。
- 登研155号: 利害関係人による抹消申請でも、承諾書には印鑑証明書が必須。
- 登研481号: 仮登記名義人が自ら抹消する場合でも、印鑑証明書の添付が必要。
◆ 実際の申請書のイメージ
登記の目的 所有権移転請求権仮登記抹消 原因 令和〇年〇月〇日 契約解除 義務者 仮登記名義人(氏名・住所) 申請人 仮登記義務者(氏名・住所) 添付書類 ・登記原因証明情報 ・名義人の承諾書(印鑑証明書付き) ・代理権限証書(代理人が申請する場合) 登録免許税 2,000円
◆ 実務での注意点
- 承諾書には印鑑証明書の添付が必要です。
- 名義人と連絡が取れない場合は裁判手続きが必要になることもあります。
- 事前に法務局への相談を行うとスムーズです。
◆ まとめ
- 仮登記の抹消は原則共同申請。
- でも、承諾書+印鑑証明書があれば、仮登記義務者の単独申請が可能。
- 相手が協力できないケースでも、制度を正しく使えば対応できます。
仮登記の処理でお困りの場合は、お気軽にご相談ください。
※この記事は一般的な情報をもとに作成しています。
具体的な事案については専門家にご相談いただくことをおすすめします。