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【保存版】民生委員とは? 役割・選ばれ方・活動内容・制度の未来までわかりやすく解説

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「民生委員」という言葉を耳にしたことがあっても、どのような役割を担っている人なのか、実際にはよくわからないという方も多いのではないでしょうか。

民生委員制度は、私たちの暮らしに密接に関わる重要な地域福祉制度のひとつでありながら、その具体的な活動や制度の成り立ちについては、まだ広く理解されているとは言えません。

この記事では、民生委員制度の基礎から、法的根拠、具体的な活動内容、任期や報酬、そして今後の課題と展望までを、できるだけわかりやすく丁寧にご紹介します。

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民生委員制度とは?

民生委員制度は、1917年(大正6年)に岡山県で始まった「済世顧問制度」が起源です。これは、地域の中で生活に困っている人の相談に乗ったり、行政とつないだりする役割を持った制度でした。

この取り組みが評価され、1928年(昭和3年)には「方面委員制度」として全国に広がります。その後、1946年(昭和21年)には、現在の「民生委員制度」として改めて整備され、法制度化されました。

平成29年(2017年)には制度発足から100周年を迎え、全国で約23万人もの民生委員が活動しています。私たちの暮らす西宮市でも、平成29年時点で678名が活動しており、それぞれの地域で、さまざまな困りごとを抱える人々を見守っています。

民生委員になるには

民生委員になるには、地域の事情をよく知る推薦会からの推薦と、都道府県知事を通じた厚生労働大臣の委嘱を経る必要があります。つまり、誰でも「なりたい」と手を挙げればなれるというわけではありません。

民生委員法第6条には、推薦の際に考慮すべき条件として「人格識見高く、広く社会の実情に通じ、且つ社会福祉の増進に熱意のある者で、児童福祉法の児童委員としても適当な者」と明記されています。

推薦を行う「民生委員推薦会」は、市町村長によって選ばれた有識者や議員、社会福祉関係者などから構成されます。公平で地域に根ざした判断がされるよう、制度的に支えられているのです。

民生委員の仕事と法的根拠

民生委員の主な仕事は、住民の生活を見守り、支援が必要な方に適切な相談・助言を行うことです。彼らの活動は、民生委員法第14条に明確に定められています。

この条文では、民生委員はまず「住民の生活状態を必要に応じ適切に把握しておくこと」が求められています。日常的に地域を見守る中で、「最近、あの家の様子が変わった」「一人暮らしの方が姿を見せない」といった小さな変化に気づき、必要な支援につなげることが重要とされています。

次に、「援助を必要とする者が自立した生活を営むことができるように生活に関する相談に応じ、助言その他の援助を行うこと」、さらに「福祉サービスを適切に利用できるよう情報提供などの援助を行うこと」が明記されています。

また、社会福祉に関する団体や事業者と密に連携し、その活動を支援することや、福祉事務所などの行政機関と協力することも職務の一環です。

加えて、すべての民生委員は児童委員も兼ねており、子どもや子育て家庭への支援にも携わります。

任期と報酬について

民生委員の任期は原則として3年です。再任も可能であり、地域の実情によっては長く務める方も少なくありません。ただし、高齢化の進行とともに後継者が見つからず、再任を重ねているという現状も見受けられます。

報酬については、民生委員法第10条に「民生委員には、給与を支給しない」と明記されており、ボランティアとしての位置づけです。

その代わりに、活動にかかる交通費や通信費、文具代などについては「活動費」という形で一部の補助が出る場合があります。一般的には、年間10万円未満という水準ですが、自治体によって若干異なります。

守秘義務と解嘱(解任)

民生委員には、相談内容や知り得た情報を他人に漏らしてはならないという厳格な守秘義務が課せられています。

民生委員法第15条では、民生委員は「個人の人格を尊重し、その身上に関する秘密を守り、差別的または優先的な取り扱いをしてはならない」と定められています。これにより、相談者は安心して悩みを打ち明けることができます。

また、民生委員の地位を宗教や政党、営利目的に利用することも厳しく禁止されています(民生委員法第16条)。もしこれらに違反した場合は、厚生労働大臣によって「解嘱(かいしょく)」、つまり解任されることもあります。

他制度との違い

民生委員と似たような役割を持つ制度として、「地域包括支援センター」や「社会福祉協議会(社協)」がありますが、それぞれ役割や立場が異なります。

地域包括支援センターは、特に高齢者に特化した相談支援機関です。保健師・社会福祉士・ケアマネジャーといった専門職が配置され、介護予防や権利擁護、地域資源の調整を行います。専門的・制度的な支援を提供する機関です。

一方、民生委員はより広く生活全般に目を配り、制度にとらわれず「誰かの困りごとに気づき、話を聞き、必要に応じてつなぐ」役割を担っています。公的機関への橋渡しの存在とも言えるでしょう。

また、社会福祉協議会は福祉活動を推進する団体であり、地域のボランティア活動や資金貸付けなどを担います。民生委員はその社協とも連携しながら、実際の支援現場で活動します。

Q&A:よくある相談事例

Q. 高齢の親が一人暮らしで心配。どこに相談すれば?

→ 民生委員が訪問し、日常の様子を確認してくれます。必要に応じて、包括支援センターやケアマネジャーと連携し、支援を提案してくれます。

Q. 子育てがしんどくて、誰にも相談できない…

→ 民生委員(児童委員)は、子育て中の悩みにも耳を傾け、場合によっては子育て支援センターや専門機関を紹介してくれます。

Q. 近所の一人暮らしのお年寄りが心配です。

→ 気になることがあれば、民生委員に連絡しましょう。地域の見守り活動の一環として訪問し、状況を把握してくれます。

民生委員制度の課題と未来

民生委員制度が直面している大きな課題の一つは、担い手不足と高齢化です。国の指針では「75歳未満を選任するよう努める」とされていますが、実際には75歳以上の民生委員も多く活動しています。

さらに、個人情報保護の意識の高まりにより、民生委員が地域住民に関わる際のハードルが上がっている現状もあります。

今後は、ICT(情報通信技術)の導入や、役割の再整理、多職種との連携などを通じて、より柔軟で持続可能な制度へと進化していくことが求められています。

民生委員に相談するには?

民生委員の情報は、市区町村の福祉課に問い合わせることで確認できます。地域によっては、町内掲示板や回覧板、自治会の広報誌などでも民生委員の名前と連絡先が掲載されています。

「こんなことで相談してもいいのかな」と迷うようなことでも、まずは気軽に声をかけてみることが大切です。

おわりに

民生委員は、制度に基づいて活動する「地域の相談役」でありながら、報酬を得ずに住民のために尽力する、まさに“縁の下の力持ち”のような存在です。

社会が複雑化し、孤立しがちな時代だからこそ、こうした顔の見える支援者がいることは、私たちにとって大きな安心につながります。

困ったとき、誰に相談していいかわからないときには、ぜひ民生委員を思い出してみてください。

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