人が死亡した場合、相続が発生します。
相続とは、ある人の遺産(負債・義務を含む)を相続人又は受遺者などが引き継ぐことです。

相続と遺産分割は似ていますが、別の性質を持っています。
相続は自然発生的に起こるものですが、遺産分割は主体的に行うものです。

不謹慎かもしれませんが、卵(相続)と卵焼き(遺産分割)の違いのように考えて頂くと分かりやすいかもしれません。

相続が発生した場合、負債・義務を含む相続財産は相続人の共有状態となります。
誰がどの遺産を引き継ぐかが決まっていないため、相続人が一人である場合を除き、勝手に遺産を処分することはできません。

この共有状態を解消するために、遺産分割という法律行為が存在します。
そして、遺産をどのように相続するかの協議が整えば、遺産分割協議書を作成するのが一般的です。

遺産分割協議書作成の理由とポイント

遺産分割協議書は、被相続人の預貯金払戻しや不動産相続登記の際、手続先(銀行・法務局等)に対して協議が成立したことを証明する役割があります。
口頭でも協議は有効ですが、後日の争いを防ぐためにも遺産分割協議書は欠かせません。

遺産分割協議書を作成する場合、相続人全員の印鑑証明書を用意した上で、協議書に実印を捺印します。
協議書に誤りがあると、改めて協議書を作成することになります。

もちろん、実印の捨印を貰っておけば、改めて協議書を作成せずとも訂正印として利用可能です。
しかし、司法書士などの専門家が間に入っていない限り、安易に捨印はしないことが賢明といえます。

遺産分割協議が成立すると、遺産分割の効力は相続開始時にさかのぼります。(民法第909条)
これは、遺産分割協議が成立した時点で効力を生じたこととすると、協議成立までの空白期間ができるためです。

協議が遅れると二次相続が発生したり、「協議が成立するまでの間の賃料債権は、共同相続人が法定相続分に応じて取得する」という判例(最判平成17.9.8)もあるため、遺産分割協議は早めに行うことが望しいといえます。

遺言があれば遺産分割は不要ですが・・・

被相続人が遺言を遺していた場合、遺言内容に従って分割することができるため、遺産分割協議書の作成は必要はありません。
ただし、遺言で禁じられていない限り、遺言と異なる内容で共同相続人全員が遺産分割協議することも認められています。

遺産の分け方の基準は?

どのように遺産を分割するかはケースバイケースですが、遺産の分け方については以下の法律があります。

民法第906条(遺産の分割の基準)

遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。

分割方法で判断に迷う場合は、法定相続分を基準にすることも多いですが、上記の基準を参考にしてもいいでしょう。
法定相続分は、相続人が配偶者・子であれば各2分の1、配偶者・直系尊属であれば配偶者3分の2・直系尊属3分の1、配偶者・兄弟姉妹であれば配偶者4分の3・兄弟姉妹4分の1です。

まとめ

遺産分割協議がまとまらなかったり、他の相続人が行方不明で協議ができないケースもあります。
このような場合、家庭裁判所に対して遺産分割調停を申し立てたり、不在者財産管理人の選任を申し立てるといった方法もありますので、弁護士・司法書士などの専門家に相談されることをお勧めします。

話がまとまらないことを理由に遺産が放置されているケースもありますが、準確定申告や相続税申告など、期限内の手続を求められるものもありますのでご注意ください。

以上、遺産分割と相続の違いや、遺産の分け方についての解説でした。
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参考条文

民法第909条(遺産の分割の効力)遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。

参考判例

遺産は、相続人が数人ある場合において、相続開始から遺産分割までの間、共同相続人の共有に属するものであるから、この間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産というべきであって、右共同相続人がその相続分に応じて分割相続債権として確定的に取得するものと解するのが相当である。遺産分割は、相続開始のときにさかのぼってその効力を生ずるものであるが、右共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得した右賃料債権の帰属は、後にされた遺産分割の影響を受けない。(最判平成17.9.8)

 

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