近年、ご自身が認知症になった場合の対策として、家族信託を検討される方が増えています。

家族信託(民事信託)は、家族や親族に財産を管理してもらう、財産管理の一手法です。

 

最近、TVなどメディアや雑誌で家族信託が特集されることも多くなりました。

そのため、

「家族信託について知りたい」
「自分も家族信託を使うメリットがあるの?」
「成年後見や任意後見と家族信託はどう違うの?」

といったご相談も増えています。

 

成年後見や任意後見制度も、高齢者・障害者向けの財産管理の一手法です。

しかし、家族信託には成年後見や任意後見にはないメリットがあります。

 

本記事では、この家族信託について、概要や特長を解説いたします。

家族信託とは?

家族信託とは、一言でいうと、「信頼できる家族や親族に、自分の財産管理や処分を任せる仕組み」。

家族信託の登場人物は、委託者、受託者、受益者の3者が基本です。

 

受託者や受益者については、以下の記事で解説しています。

家族信託が注目されている理由

家族信託が注目されている理由は、以下の点からです。

1.認知症対策として、成年後見制度にないメリットがある

家族信託は、認知症対策として、成年後見制度にないメリットがあります。

 

例えば、親に認知症の症状が出て、判断力が低下したケースを考えます。

この場合、子供が親の所有する不動産を売却して、施設の入所費用にあてることは簡単にできるのでしょうか。

 

不動産を売却するためには、所有者の意思確認が必要です。

しかし、認知症などにより所有者の意思確認ができないと、不動産売買の手続は進められません。

 

そのため、ご本人に対し、法定代理人である成年後見人を選任する方法がよく取られています。

成年後見人は、家庭裁判所の許可を得て、ご本人(成年被後見人)の不動産を売却することができます。

 

ただし、成年後見制度の利用に関しては、注意が必要です。

その理由は、不動産売却のために成年後見人を選任したとしても、不動産売却後に成年後見人が離れることはないから。

 

成年後見人は、ご本人(成年被後見人)が死亡するか、意思を回復するまで業務を続けることになります。

そのため、成年後見人の任務が終了するまで、継続的に成年後見人への報酬が発生します。

 

成年後見人の基本報酬は、月額およそ2万~5万円。

10年間成年後見制度を利用した場合の報酬合計額は、以下のとおりです。

月額2万円(目安:財産額1,000万円以下)・・・10年間で240万円
月額5万円(目安:財産額5,000万円超)・・・10年間で600万円

 

基本報酬以外にも、遺産分割や不動産売却など、特別な業務を行った場合は成年後見人の報酬が加算されます。

報酬額は、家庭裁判所が後見事務の内容を見て決定しますが、財産額が多くなるほど報酬も上がるのが一般的です。

 

なお、成年後見制度のメリットとして、財産管理を第三者が行うことにより遺産が明確になることや、面倒な介護施設との契約や金銭管理などを任せられるという点があります。

そのため、成年後見は使いようによっては有用な制度です。

 

しかし、成年後見制度には以下のようなデメリットもあります。

・合理的な相続税対策であっても認められにくい(年額110万円以下の贈与など)
・収益物件の改装や、金融機関からの新たな借入など、積極的な財産運用が認められにくい

 

また、後見人によってはずさんな財産管理をしたり、本人との面会を怠ったりと、問題を起こすケースもゼロではありません。

 

平成29年12月末日時点で、成年後見制度(成年後見・保佐・補助・任意後見)の利用者数は210,290人

判断能力が不充分と見られる人の総数(推計約870万人)の2%程度しか利用しておらず、成年後見制度は浸透していると言えない状況です。

今井康介
実際には、成年後見制度が役に立つケースも多くあります。
生前対策を考える際は、家族信託だけでなく、成年後見制度の利用も検討することが重要です。

 

成年後見制度に引き換え、家族信託では、専門家への継続的な報酬が発生しません。

家族信託契約書を作成する際などに費用はかかりますが、後見人への報酬合計額と比べると、低額となることが多いです。

 

また、成年後見制度では認められにくい相続税対策や積極的な財産運用も、家族信託では可能です。

そのため、家族信託では、成年後見制度で満たせないニーズを満たすことができます。

 

先ほどの不動産売却のケースも、家族信託により受託者が売却できる旨を定めていれば、成年後見制度の利用も必要ありません。

このように、幅広い認知症対策ができることが家族信託のメリットです。

2.遺言の代用となる

家族信託が注目されている2点目の理由は、家族信託が遺言の代用となる点です。

 

例えば、当初は親を委託者兼受益者とし、親が亡くなった場合に子を受益者とすることができます。

そのような規定を設けることで、遺言で受遺者を定めることと同等の効果があります。

 

さらに、受益者は連続的に定めることもできます。

「受益者である子が亡くなったら、子の配偶者を受益者とする」といった仕組みを作ることも、家族信託では可能です。

3.浪費癖のある子や未成年者の保護のため

家族信託は、浪費癖のある子や未成年者の保護のためにも利用できます。

 

例えば、浪費癖のある子や未成年者が多額の遺産を相続するケースはどうでしょう。

せっかくの遺産も、適切に使用されなければ遺族のためになりませんよね。

 

そういった心配がある場合、信頼できる家族を受託者とし、浪費癖のある子や未成年者を受益者とする方法が考えられます。

受託者は、定期的に生活費を受益者に支給し、財産管理を行います。

 

未成年者が成人したら信託を終了させるなど、期限付きの仕組みを作ることも可能。

このような細かい将来設計ができるのも、家族信託が注目されている理由です。

 

以上が家族信託(民事信託)のメリットです。

なお、家族信託にはデメリットもございますので、以下の記事も参考にしてください。

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