昨今、「成年後見制度ではできないこと」がクローズアップされて、

成年後見が批判の対象になることが増えてきました。

 

また、成年後見に携わる弁護士・司法書士も悪者扱いされて、

法律専門家が高齢者や障がい者を騙しているようなイメージを持つ人もいます。

 

「成年後見は使ってはいけない!」

「成年後見制度は認知症の対策になりません!」

 

などと訴えて他の制度(家族信託など)に誘導しようとする団体も・・・。

 

当事務所では、成年後見・任意後見など高齢者・障がい者向けの業務を

主に扱っているため、この状況は見過ごすことができません。

 

確かに成年後見にはできないこともありますが、成年後見にできて、

家族信託など他の制度にできないことも多々あります。

 

そのため、実際に高齢者や障がい者をサポートする際は、成年後見だけでなく、

任意後見・家族信託・遺言など、様々な法律知識を使うことが重要です。

 

ただし、「成年後見で何でもできる」という誤解があってもいけませんので、

今回は、成年後見制度ではできない、又は成年後見では困難な3つの事例をご紹介します。

目次

成年後見でできないこと1.贈与

成年後見でできないことの1番目は、贈与です。

 

例えば、父親が子供に対し、「孫が大学に合格したら、教育費として500万円贈与するよ」

と約束していたとします。

 

しかし、その後父親が認知症になり、父親に成年後見人が選任されれば、

孫が大学に入学してもこの贈与は通常認められません。

 

通常というのは、例えば口約束だけだった場合などのケース。

口頭で贈与を約束していたことは、成年後見人にも成年後見人を監督する家庭裁判所にも

証明できないため、どうすることもできないと思われます。

 

もちろん、専門職でなく子供が成年後見人に選任された場合でも、

「自分が直接聞いたんだから間違いない!」と勝手に贈与してしまうことも認められません。

 

贈与の事実が発覚すれば、成年後見人は解任され、別の後見人が選任されてしまうでしょう。

成年後見でできないこと2.担保設定

成年後見でできないことの2番目は、担保設定です。

 

たとえば、賃貸物件の老朽化により建物を再築しようと思ったケース。

金融機関から融資を受ける必要がありますが、融資の条件は、認知症の父が所有する土地に抵当権を設定すること。

 

家族は、金融機関から言われるがまま、父のために成年後見開始の申立を裁判所に行いました。

その後、無事に専門職の成年後見人が選任され、安心したのもつかの間。

 

選任された成年後見人からは「前例がないため、家庭裁判所と協議します」との返答。

結局、成年被後見人の財産に担保設定するのはリスクが大きいということで、後見人からは認められませんでした。

成年後見でできないこと3.増改築

成年後見でできないことの3番目は、増改築。

 

父には成年後見人が選任され、これまで父と母が暮らしていた自宅には、今は母が一人暮らし。

しかし、その母も高齢になり、家のリフォームが必要になりました。

 

母は、父の成年後見人に対し、「主人のお金で、家をリフォームしてもらいたい。」

「エレベーターも必要になるので、合計300万円はかかる」と説明。

 

後見人は、「本人の財産が目減りしてしまい、平均寿命までのお金がもたない可能性がある」と反対します。

家庭裁判所も、「成年後見人と協議してほしい」との返答。

 

結局、母はリフォームを諦めて、施設に入所することになりました。

まとめ

以上、成年後見制度ではできない、又は困難な3つの事例を紹介しました。

こういった話は後見の全体数からすると少ないと思われますが、ゼロではありません。

 

実際に成年後見制度を利用してこのような状況になったら、

希望を叶えられなかった親族は、後見制度に対していいイメージを持つことはないでしょう。

 

もちろん、成年後見人としても家庭裁判所としても、本人の権利擁護を第一に考えており、

他の親族をいじめようとしているわけではありません。

親族の意向が通らない場合もある、というのは成年後見で知っておいて頂きたい前提です。

 

なお、贈与・担保設定・増改築を考えておられるなら、家族信託は一つの解決策になりえます。

そのため、終活のサポートでは、家族信託の検討は欠かせません。

 

西宮市の司法書士・行政書士今井法務事務所では、成年後見・任意後見・家族信託など、

高齢者・障がい者向けのトータルサポートを行っておりますので、お気軽にご相談ください。

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