民事信託(家族信託)のデメリットとは?成年後見・遺言との違いも

2017年、NHKの「クローズアップ現代」や「あさイチ」で民事信託(家族信託)が取り上げられました。
内容は、「民事信託(家族信託)を使えば、成年後見や遺言で出来ないことができますよ」といったものです。

それらメディアの影響もあり、民事信託に関する関心は年々高まっているのを感じます。
私の所属する兵庫県司法書士会でも、2018年にはさっそく民事信託に関する研修が開催されました。

個人的にも、相続(争族)トラブルを防ぐため、多くの人が民事信託について知識を深めるのは大賛成です。
民事信託を利用して家族が本当に幸せになれば、言うことはありません。

民事信託(家族信託)は万能の相続トラブル解決策?

しかし、若干心配しているのは、民事信託が「万能の相続トラブル解決策」と勘違いされるおそれがある点です。
メディアでは民事信託のメリットが強調されることが多く、デメリットが語られることは多くありません。

なお、民事信託に限らず、成年後見(任意後見)や遺言など他の制度もデメリットを抱えています。
そのため、相続対策をする際は、各制度のメリット・デメリットをよく理解することが大事です。

それでは、民事信託にはどういったデメリットがあるのでしょうか。
今回は、ポイントを絞ってできるだけ分かりやすく解説していきます。

民事信託(家族信託)のデメリットとは?

万能と思われがちな民事信託ですが、以下のようなデメリットもあります。

  • 入院、施設の契約、遺産分割などの法律行為については取り決めできない。
  • 信託契約後に取得する財産(相続財産や保険金など)は、追加で信託しない限り受託者が管理できない。
  • 信託した収益不動産の赤字について、信託していない他の所得と損益通算できない。
  • 当事者に仕組みを理解してもらうことが容易ではない。

まず、民事信託でできるのは信託財産の管理・運用が主で、施設との入所契約といった身上監護は含まれません。
そのため、ご本人が認知症などで判断力が低下した後に施設入所契約をしたい場合は、成年後見(任意後見)制度を利用することになります。

成年後見は、判断力の低下したご本人の代わりに、裁判所から選ばれた成年後見人が財産管理・身上監護をする制度です。
成年後見人には広範な代理権が与えられており、民事信託ではできない手続きをすることができます。

また任意後見は、本人が判断力を有している間に、将来自分の判断力が低下したときの財産管理・身上監護をしてくれる人(任意後見人)を定めておく制度です。
成年後見と異なり、将来財産管理をしてもらう人を自由に選ぶことができます。

民事信託では本人の代わりに受託者が遺産分割協議をすることもできないため、この場合も成年後見(任意後見)制度を利用することになります。
民事信託を利用すると成年後見(任意後見)は不要と勘違いされがちですが、民事信託と併用するケースも多いです。

なお、民事信託を使っても、必ずしも節税ができるわけではありません。
民事信託は、相続税や贈与税などの租税を回避をする制度ではないためご注意ください。

そして、民事信託を利用する際に最も足かせとなるのは、当事者全員が民事信託の制度を理解することです。
民事信託では「委託者」「受託者」「受益者」といった複数の当事者が関わります。

当事者全員の理解がおそろかなままに民事信託を利用すると、不測の事態に陥りかねません。
民事信託を検討される際は、当事者となる方々が責任をもって仕組みづくりに関わることが大切です。

民事信託(家族信託)は遺言の代用になる?

また、「民事信託は遺言の代用になる」と言われることもありますが本当でしょうか。
実際、民事信託を利用すれば遺言が不要かと考えるとそうとも言えません。

その理由は、民事信託の契約書は遺言書と比べて作成が難しく、専門家に依頼する際の費用も高くなるというデメリットがあるためです。

例えば、弊所では公正証書遺言作成をサポートする場合7~15万円程度の報酬を戴いておりますが、民事信託は最低30万円からお願いしております。
どの専門家に依頼しても、信託契約の報酬は遺言書作成の倍以上といったことは珍しくありません。

また、自筆証書遺言は紛失などのリスクがあるためあまりお勧めしていませんが、ご自身で遺言を作成される場合の費用はほぼ無料です。
そのため、「遺言の代わりになるから」という理由だけでは民事信託をお勧めしません。

民事信託(家族信託)のメリットとは?

以上のように、民事信託(家族信託)は必ずしも万能の制度とは言えません。
民事信託は、遺言や成年後見と比べると明らかに利用のハードルが高いと言えるでしょう。

しかし、民事信託には遺言や成年後見にない以下のようなメリットもあります。

  • 自分が死亡した後は配偶者に相続させ、配偶者が死亡した時は次男に相続させるといった承継方法を定めることができる。
  • 成年後見制度では難しい資産活用をすることができる。

そのため、遺言や成年後見でも問題が解決できないようであれば、民事信託を検討されることをお勧めします。

弊所でも、豊富な成年後見や遺言の経験を生かして、民事信託(家族信託)に関するサポートをしております。
事務所は西宮にございますが、遠方の方には出張相談にも対応していますので、お気軽にご相談ください。

関連記事

  1. 相続人が行方不明で連絡が取れないときの遺産分割協議
  2. 遺言の有無を確認したい!遺言の探し方と相続手続の注意点
  3. Q.遺産相続後に借金が発覚した場合、相続放棄できますか?
  4. 亡くなった人の戸籍謄本(出生から死亡までのすべて)の取り方は?
  5. 相続放棄はいつからいつまで?熟慮期間の計算方法
  6. 遺産分割と相続の違いは?遺産の分け方は民法や判例を参考に
  7. 遺言をお勧めする4つのケース~遺産分割で悩まないために~
  8. 不動産などの遺産分割で代償分割する際の注意点
PAGE TOP