不動産登記における一括申請の可否(所有権関係)について、先例・登記研究・登記実務等の情報を整理しました。
登記にかかわる方の参考になりましたら幸いです。
先例
数人共有の不動産の所有権を第三者に移転した場合の登記については、同一の申請書によることができる。また、共有者の1人が他の共有者数人の持分を取得した場合の登記についても、同様である。(昭和35年5月18日民事甲第1186号局長回答)
→甲・乙共有の不動産を丙が単独で買受けた場合、登記の目的を「共有者全員持分全部移転」として一括申請ができる。
相続による所有権移転あるいは持分全部移転については、第三者の権利に関する登記がある持分とそうでない持分とがある場合であっても、同一の申請書によってしなければならない。(昭和30年10月15日民事甲第2216号民事局長回答参照)
→相続人の持分のうち、第三者の権利のない持分を相続登記後に移転する場合は、「何某持分一部(順位何番から移転した持分)移転」等と登記の目的を記載する。(平成11年7月14日民三第1414号第三課長回答)
相続財産につき、相続登記とその分筆登記とを併せて申請する場合には、登記原因の前後に関わらず、常に分筆登記を先にすべきものとされる。相続後に分筆したからといって、分筆前の表示で相続登記を先に行うことは相当でない。土地に一部買収のため、国又は市町村において、相続及び分筆登記を代位嘱託する場合においても同様である。(昭和36年4月22日民甲910局長通達)
登記研究
所有権移転
同一の被相続人名義となっている不動産の共有持分と他の不動産所有権は、同一の申請書をもって相続を登記原因として登記申請をすることができ、この場合の登記目的は、「何某持分全部移転・所有権移転」とし、持分の表示は申請書の不動産の表示中に記載すればたりる。(登記研究第353号115頁)
持分の異なる2個の不動産(A物件持分4分の1、B物件持分4分の2)について、登記原因、当事者が同一である持分全部移転の登記は、同一の申請書でできる。(登記研究第430号)
甲が4分の1、乙が4分の1、丙が4分の2を共有する物件について、乙が持分全部、丙が持分4分の1を甲に移転する場合、登記の目的を「乙持分全部、丙持分4分の1移転」として、一括申請できる。(登記研究第437号)
登記権利者・登記義務者・登記原因が同一であり、かつ、持分の移転について第三者の権利に関する登記(処分制限の登記及び予告登記を含む。)がなされていない限り、所有権移転登記と共有持分全部移転登記は、同一の申請書で申請することができる。(登記研究第470号97頁)
甲、乙、丙各3分の1の共有となっている場合、各共有者の持分のうち各6分の1を同一契約でA、B、Cに各6分の1移転する場合、登記の目的は、「共有者全員持分一部移転」とするべきではなく、「甲持分6分の1、乙持分6分の1、丙持分6分の1移転」とするのが相当である。(登記研究第546号152頁)
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