役所から届く郵便物は、ちょっと緊張するものです。開けてみると「税金の通知」や「年金のお知らせ」だったり、時には「裁判所からの書類」ということもあります。
なかには「こんなの要らない」「受け取りたくない」と感じることもあるでしょう。
そこで今回は、役所からの郵便物を“開封せずに返送する”方法と、その際に絶対に知っておきたい注意点を、法律実務の視点も交えて解説します。
1. 「受取拒否」の手続きとは?
郵便には「受取拒否(うけとりきょひ)」という制度があります。
これは、受け取った郵便物を 開封せずに返送する仕組み です。
手順
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封筒を 開けないまま 手元に置く。
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封筒の表面に赤字で 「受取拒否」 と書く。
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その下に、自分の署名または押印を添える。
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名前を書くことで「受取拒否の意思」を明確にする必要があります。
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ポストに投函するか、郵便局の窓口に差し出す。
費用はかからない
切手を貼る必要はありません。差し出すだけで、差出人(役所)に返送されます。
2. 開封してはいけない!
注意すべきは、一度でも開封した郵便物は「受け取った」扱いになることです。
開封した時点で、受取拒否はできません。
つまり、返送したいと思うなら、届いた瞬間に「開けずに返す」と決断することが重要です。
3. 受取拒否しても意味がない場合
ここが一番誤解しやすいポイントです。
役所からの郵便物には、大きく分けて二種類あります。
(1)返送しても大きな問題がないもの
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案内・お知らせ類(セミナー、広報誌、啓発パンフレットなど)
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任意加入の制度案内
こうした郵便は、受け取りを拒否しても大きな不利益はありません。
(2)返送しても「届いた」扱いになるもの
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税金の納付通知書
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国民健康保険や国民年金の督促
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裁判所からの特別送達(訴状、支払督促、呼出状など)
これらは、受取拒否しても法的には「通知が届いた」とみなされることが多いのです。
たとえば、納税通知を返送しても、納期限は変わらず進み、督促状や延滞金の対象になります。
4. 受取拒否のリスク
「受け取らなければ大丈夫」と思って返送してしまうと、かえって不利になる場合があります。
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延滞金が発生:納税通知を無視して期限が過ぎると、自動的に延滞金がつく。
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差押えリスク:督促が続くと、最終的に預金や給与の差押えに進む可能性がある。
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裁判の欠席扱い:訴状を受取拒否した場合でも裁判は進行し、欠席裁判で不利な判決が出ることがある。
つまり、「受取拒否したから無効になる」というのは大きな誤解なのです。
5. 実務的な使いどころ
それでも受取拒否が役に立つ場面もあります。
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単なる広告や案内で不要なものを返すとき
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同じ通知が何度も送られてきて困っているとき
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家族宛てで既に亡くなった方への郵便を返送するとき(この場合は「受取人死亡」と書くのが一般的)
重要な通知を返送してしまうのは危険ですが、「これは不要だな」という場合には有効な手段です。
6. まとめ
役所からの郵便物を「開封せずに返送する」には、
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封筒を開けない
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表に「受取拒否」と赤字で記載し、署名する
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ポストに投函する
という簡単な手続きで済みます。
ただし、大事な通知を返送しても、法的には届いたことになってしまう場合が多いので要注意です。
もし中身に不安があるなら、専門家(司法書士・弁護士など)に相談する方が安全です。
👉 最後にひとこと。
役所からの郵便は、受け取るのが気が重いものも多いですが、返送すれば問題解決!…とは限りません。
「受取拒否が有効かどうか」を見極めながら、必要なら早めに相談することをおすすめします。