PR

遺言の有無を確認したい!遺言の探し方と相続手続の注意点

相続・遺言

相続が発生した場合、相続手続する前にまず確認するのが遺言の有無です。

もし被相続人が遺言を遺していた場合、遺言内容を無視した遺産分割をすると協議が無効となるおそれがあります。

 

しかし、被相続人が遺言を遺しているか分からない場合はどうすればいいでしょうか。

遺言は極めてプライベートなものであるため、遺言を作成したことを相続人に伝えていないかもしれません。

 

また、将来の相続手続に備えるために、本人が遺言を遺しているか調べたいケースも考えられます。

今回は、遺言の探し方や、遺言が見つかった場合の手続について解説します。

スポンサーリンク

遺言の探し方(公正証書遺言・秘密証書遺言)

本人が遺したものが公正証書遺言や秘密証書遺言であれば、公証役場で遺言の有無を確認できます。

その理由は、日本公証人連合会では、昭和64年1月1日以降(一部の公証役場ではそれ以前)の公正証書遺言及び秘密証書遺言を「遺言検索システム」に登録しているためです。

 

公正証書遺言の原本は公証役場で原則20年間保管され(公証人法施行規則第27条)、遺言者が100歳又は120歳になるまで保管されます。

そのため、公正証書で遺言を作成しておけば紛失のおそれはまずありません。

 

ただし、公正証書遺言や秘密証書遺言については、本人が存命中であればその本人だけが開示請求できる決まりです。

配偶者・子等の推定相続人、利害関係者、本人の成年後見人であっても、開示請求はできません。

 

そのため、本人の存命中は別の方法で遺言の有無を調査することになります。

例えば、本人の自宅をくまなく探したり、銀行の貸金庫を開扉するなどの方法です。

 

銀行に貸金庫を持っているかどうかは、本人の預金口座から「貸金庫管理手数料」が引き落とされているかで確認することができます。

口座引き落としでない場合は、6ヶ月に1回程のペースで自宅に振込依頼書が届くのが一般的です。

 

もちろん、貸金庫があったとしても、誰でも開けてもらえるわけではありません。

代理人届もしていなければ、「本人に成年後見人を選任してもらい、成年後見人から申し出してほしい」と言われる可能性もあります。

 

その他、遺言作成時に遺言執行者を定めている可能性もあるため、本人の親族や知人に確認するのも一つです。

もし親族や知人が遺言執行者になっていれば、遺言内容まではともかく、遺言の有無を教えてくれることが期待できます。

 

以上のような調査をしても遺言が見つからず、また本人が遺言を遺している可能性があるならば、本人の死亡後、公証役場の検索結果を待って相続手続を行うことです。

本人の死亡後であれば、相続人、受遺者や遺言執行者などの利害関係人は以下の書類等を添えて検索の依頼ができます。

  • 被相続人の死亡が確認できる戸籍謄本等
  • 相続人であることを確認できる戸籍謄本等
  • 受遺者であることを示す公正証書遺言
  • 本人確認書類

自筆証書遺言が見つかったらどうする?

見つかったのが自筆証書遺言であれば、封を開けずに家庭裁判所に遺言書検認の申立を行います。

遺言書の検認を経ずに開封すると、手続違反の制裁として裁判所から5万円以下の過料に処せられる場合があります。

 

なお、自筆証書遺言については、法務局で遺言書を保管する法律が2020年7月10日(金)から施行されます。

詳しくは以下の記事をお読みください。

[getpost id=”2025″ title=”関連記事” ]

 

次に、見つかったのが公正証書遺言であれば、遺言書検認を申立てる必要はありません。

遺言書検認では相続人全員に検認日時等が通知され、一旦裁判所で検認手続を経ることになるため、その意味でも公正証書遺言はお勧めです。

 

なお、秘密証書遺言は遺言書の検認が必要であるためご注意下さい。

民法第1004条(遺言書の検認)

  1. 遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。
  2. 前項の規定は、公正証書による遺言については、適用しない。
  3. 封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。

遺言は1人1通とは限らない

遺言は、1人1通しか作成していないとは限りません。

そのため、遺言書が見つかったからと言って、その他の遺言がないと判断するのは時期尚早です。

 

もし遺言が複数通あり、互いの遺言内容が食い違っている場合、前の遺言の内容が抵触している箇所は撤回したものとみなされます。

民法1023条(前の遺言と後の遺言との抵触等)

  1. 前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
  2. 前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。

なお、遺言が複数通あると言っても、必ず前の遺言すべてが無効になるわけではありません。

あくまでも抵触部分が無効になるのみですので、誤った相続手続をされないようにお気をつけ下さい。

 

本人が公正証書遺言を作成している場合は、新しい遺言を作成する際に、以下のような文言を入れるのが通常です。

第〇条 遺言者は、平成〇年〇月〇日〇〇法務局所属公証人〇〇作成平成〇〇年第〇〇号の公正証書遺言を全部撤回する。

この文言があれば、前の遺言はすべて無効になるため、遺言の解釈に迷うこともありません。

自筆証書遺言を作成される際も、「第〇条 遺言者は、平成〇年〇月〇日付で作成した自筆証書遺言を全部撤回する。」といった文言を入れることをお勧めします。

まとめ

遺言の探し方や、遺言が見つかったときの手続について解説しました。

 

遺言があると相続手続がスムーズに進むことは多いため、弊所でも積極的に遺言作成のお手伝いを行っております。

しかし、せっかく作った遺言がどこにあるか分からない、といったことがないようご注意頂ければと思います。

 

また、自筆証書遺言は書籍等を参考に作ることもできますが、内容に不備があると大変です。

西宮の司法書士・行政書士今井法務事務所では、自筆証書遺言のチェックも承っております。

 

遺言についてお悩みの方は、お気軽にご相談ください。