相続放棄はいつからいつまで?熟慮期間の計算方法

被相続人の遺した財産(負債含む)の相続を希望せず、相続放棄する人は年々増加しています。

今回は、相続放棄における熟慮期間の計算方法を説明します。

相続放棄には期限が

相続放棄には期限があり、いつまでもできる訳ではありません。

相続放棄ができる期間(熟慮期間)は、以下のように定められています。

民法第915条(相続の承認又は放棄をすべき期間)

  1. 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
  2. 相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。

 

このとおり、相続放棄ができるのは相続開始を知ったときから3ヶ月以内が原則。

しかし、この3ヶ月の計算方法が複雑です。

 

例えば、4月30日に相続が発生した時、期限は7月30日、7月31日のどちらでしょうか。

また、7月31日が期限であった場合、7月31日の何時何分をもって熟慮期間は満了するのでしょう。

相続放棄の期限の計算方法

民法140条には、期間計算について次のように定められています。

民法第140条 日、週、月又は年によって期限を定めたときは、期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。

例えば、被相続人が5月10日に亡くなった場合、初日は算入しないため、起算日は5月11日のAM0時。

また、ただし書きのとおり被相続人が5月10日AM0時に死亡した場合は、5月10日が起算日となります。

 

そして、起算日が5月11日である場合、相続放棄の熟慮期間満了日は、8月10日PM12時(8月11日AM0時)です。

満了日は8月11日PM12時(8月12日AM0時)とはなりません。

民法第141条(期間の満了) 前条の場合には、期間は、その末日の終了をもって満了する。

期間満了日が日曜日等の休日である場合

期間満了日が日曜日等の休日である場合、期間はその翌日に満了します。

民法第142条 期間の末日が日曜日、国民の祝日に関する法律(昭和二十三年法律第百七十八号)に規定する休日その他の休日に当たるときは、その日に取引をしない慣習がある場合に限り、期間は、その翌日に満了する。

 

先の例で8月10日・8月11日が休日、8月12日が平日であれば、期間満了日は8月12日PM12時(8月13日AM0時)。

なお、相続放棄の申述期間に関する休日には、土曜日、1月2日、1月3日又は12月29日から12月31日が含まれます。(家事事件手続法第34条が民事訴訟法第95条を準用)

民事訴訟法第95条(期間の計算)

  1. 期間の計算については、民法の期間に関する規定に従う。
  2. 期間を定める裁判において始期を定めなかったときは、期間は、その裁判が効力を生じた時から進行を始める。
  3. 期間の末日が日曜日、土曜日、国民の祝日に関する法律 (昭和23年法律第178号)に規定する休日、1月2日、1月3日又は12月29日から12月31日までの日に当たるときは、期間は、その翌日に満了する。
家事事件手続法第34条(期日及び期間)

  1. 家事事件の手続の期日は、職権で、裁判長が指定する。
  2. 家事事件の手続の期日は、やむを得ない場合に限り、日曜日その他の一般の休日に指定することができる。
  3. 家事事件の手続の期日の変更は、顕著な事由がある場合に限り、することができる。
  4. 民事訴訟法第94条から第97条までの規定は、家事事件の手続の期日及び期間について準用する。

被相続人の死亡日が月末の場合

被相続人の死亡日が、月末の場合は注意が必要です。

 

被相続人が4月30日に死亡した場合、期間の初日は5月1日ですが、期間満了日は7月30日ではありません。

このケースでは、期間満了日が7月31日PM12時(8月1日AM0時)となります。

 

これは、民法第143条に該当するためです。

民法第143条(暦による期間の計算)

  1. 週、月又は年によって期間を定めたときは、その期間は、暦に従って計算する。
  2. 週、月又は年の初めから期間を起算しないときは、その期間は、最後の週、月又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する。ただし、月又は年によって期間を定めた場合において、最後の月に応当する日がないときは、その月の末日に満了する。

相続放棄の理由や件数など

家庭裁判所に相続放棄が申し立てられた件数は、平成16年は全国で14万件弱。

ところが、平成27年の申立件数は18万件を超えています。

 

相続放棄をする理由は、「遺産が少ない」「債務超過」など、相続人により様々です。

債務より財産が多い場合であっても、相続放棄をすることに問題ありません。

 

家庭裁判所に相続放棄が受理されると、その相続人は「初めから相続人でなかった」ものとみなされ、相続放棄申述受理通知書が交付されます。

 

この相続放棄申述受理通知書の写しを被相続人の債権者に送付することで、債権者からの請求は止まります。

そのため、被相続人が債務超過の場合などは、相続放棄の知識を持っておくことが大切です。

まとめ

相続放棄の熟慮期間の計算は複雑です。

思わぬ不利益を被らないよう、熟慮期間が残りわずかの時はご注意下さい。

 

相続放棄の手続や熟慮期間の計算に迷う場合は、弁護士・司法書士などの専門家に相談されることをお勧めします。

西宮の司法書士・行政書士今井法務事務所では、3ヶ月の熟慮期間を経過した後の相続放棄についても対応しております。

 

以上、相続放棄の熟慮期間についての計算方法でした。

この記事が少しでも参考になりましたら幸いです。

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