相続分譲渡とは

相続人が複数いる場合や遺言書が存在しない場合、遺産の分け方について相続人全員で協議する必要があります。この協議を「遺産分割協議」と呼びます。

遺産の分け方は相続人全員の同意が必要ですが、相続人同士の関係が良くない場合、協議が大きな負担となることがあります。このような場合、相続人は自分の法定相続分を他の相続人や第三者に譲渡することができます。これを、「相続分の譲渡」と呼びます。

譲渡は有償でも無償でも可能で、法定相続分の全部または一部を譲渡することができます。

相続分を譲渡した相続人は相続権を失い、遺産分割協議に参加する必要がなくなります。代わりに相続分を譲り受けた人が協議に参加することになります。

他の相続人以外の第三者が譲受人であっても、相続人全員の協議に参加する必要があります。

相続分譲渡のポイント

相続分譲渡の成立

相続分の譲渡は、譲渡する人と譲り受ける人の合意で成立します。譲渡時は、相続手続きで使用するために相続分譲渡証明書を作成します。

相続分譲渡証明書には、原則、譲渡人と譲受人の署名押印が必要です。押印は市区町村に登録している実印を使用し、印鑑証明書を添付します。

相続分譲渡証明書のひな型(記載例)

相続分譲渡証明書

〈被相続人〉
最後の本籍:◯◯
最後の住所:◯◯
氏名:◯◯
生年月日:昭和〇〇年〇〇月〇〇日
死亡日:令和〇〇年〇〇月〇〇日

私は上記被相続人の死亡によって開始した相続につき、自己の相続分全部を無償で譲渡します。

令和 〇〇年〇〇月〇〇日

相続分譲渡人
住所:◯◯
氏名:◯◯(実印)

相続分譲受人
住所:◯◯
氏名:◯◯(実印)

相続分譲渡証明書の提出先

相続分譲渡後の手続きは、金融機関や法務局などに対して行います。相続分を譲渡した相続人がいる場合、相続分譲渡証明書が必要です。相続分を譲渡した相続人は相続権を失っておりますので、相続手続きに参加する必要はありません。

印鑑証明書の有効期限

印鑑証明書は法務局や税務署に提出する場合、期限はありませんが、金融機関には独自のルールがあり、発行から3か月以内や6か月以内の印鑑証明書が必要となることがあります。

第三者に譲渡された相続分の取り戻し

相続分は他の相続人や第三者にも譲渡できますが、第三者に譲渡された場合、他の相続人は相続分を取り戻すことができます。取り戻すには、相続分の譲渡が行われてから1か月以内に行使する必要があります。

(相続分の取戻権)

民法第905条

  1. 共同相続人の一人が遺産の分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときは、他の共同相続人は、その価額及び費用を償還して、その相続分を譲り受けることができる。
  2. 前項の権利は、1箇月以内に行使しなければならない。

相続分譲渡後の協議参加者

相続分を譲渡した相続人は遺産分割協議に参加する必要がなくなり、譲受人が協議に参加します。

相続分の譲渡のメリット

遺産分割協議の簡略化

相続分を譲渡することで、協議に参加する相続人の人数が減り、話し合いがまとまりやすくなります。

相続人以外への譲渡が可能

生前に被相続人を介護していた人や被相続人の内縁の妻などに相続分を譲渡することもできます。

相続トラブルの回避

相続分を譲渡すると、面倒な相続手続きに関わらなくて済みます。

相続分の早期現金化

遺産分割協議が難航するおそれのある時などは、相続分を有償で譲渡することで、早期に自己の相続分を現金化することができます。

相続分の譲渡のデメリット

負債の支払義務

相続分を譲渡しても、被相続人の借金の支払い義務は残ります。相続分譲渡をする際には、被相続人の負債を誰がどのように返済するかを決めておくことをお勧めします。

税金の負担

相続分を譲渡する場合、相続税や贈与税がかかることがあるため、税理士等の専門家に相談することをお勧めします。

協議が難航する可能性もある

第三者に譲渡すると、その後の遺産分割協議が難航することがあります。そのため、共同相続人に相続分を譲渡するのが一般的です。

特別受益のリスク

相続分の譲渡が、将来の相続において譲受人の特別受益と主張されることがあります。

相続分譲渡の相談は司法書士へ

相続手続きは専門家の助けを借りることで、スムーズに進めることができます。司法書士に依頼することで、トラブルを避け、効率的に手続きを進めることができます。

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