最近は、外国会社に関する相談も増えてきました。
かといって頻繁にある相談でもありませんので、覚え書きとして外国会社についてまとめます。
これから日本において活動を考えておられる外国会社の参考になりましたら幸いです。
外国会社とは?
外国会社とは、外国の法令に準拠して設立された法人その他の外国の団体であって、会社と同種のもの又は会社に類似するものを指します。(会社法第2条第2号)
「会社と同種のもの又は会社に類似するもの」とは、日本における株式会社、合同会社、合同会社、合資会社などです。
もし外国会社が日本において継続して取引を行おうとする場合、日本における代表者を定めて登記するか、営業所を設けて登記しなければなりません。
つまり、事業をするにあたり営業所が必要なくても、日本において継続して取引をするためには「日本における代表者」を定める必要がありますのでご注意下さい。
なお、「日本に本店を置き、又は日本において事業を行うことを主たる目的とする外国会社」は、日本において継続して取引することは認められません。(会社法第821条1項)
このような場合、日本の法令に基づき子会社を設立することになります。
日本における代表者とは?
外国会社が日本において取引を継続して行おうとする場合、日本における代表者を定めることになります。
日本における代表者が必要である理由は、日本での取引において紛争が発生したような場合、
対応する相手方を確保し、日本国内における訴えの提起を容易にするためとされています。(前田庸・会社法入門(第12版)812ページ)
そのため、日本における代表者のうち一人以上は、日本に住所を有する者でなければなりません。(会社法第817条第1項)
この要件を満たす限り、外国人の代表者が日本における代表者となることも認められます。
なお、対比として、内国会社の代表取締役のうち、最低1人は日本に住所を有していなければならないという従前の取扱いは廃止されました。
そのため、代表取締役の全員が日本に住所を有しない内国株式会社の設立の登記及び、その代表取締役の重任若しくは就任の登記申請は受理されます。(平成27年3月16日民商第29号通知)。
外国会社の日本における代表者は、当該外国会社の日本における業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有します。(会社法第817条第2項)
なお、外国会社の登記申請は、必ず日本における代表者が行わなければなりません。
外国本国における代表者からの登記申請は認められないため、もし日本における代表者が行方不明等となった場合は、
改めて日本における代表者を選任して登記を申請する必要があります。(登記研究253号71ページ)
外国会社の商号はどうする?
外国会社の商号(会社名)に規制はあるのでしょうか。
日本法人においてはその商号中に「株式会社」「合同会社」「合同会社」「合資会社」という文字を用いなければなりません。(会社法第6条第1項)
しかし、外国会社にはこの規制が適用されないため、「◯◯カンパニー」「◯◯Co. Ltd.」等の表記で登記することができます。
ただし、会社法第8条第1項に定める規制は外国会社にも適用があります。
そのため、不正の目的をもって、他の会社と誤認されるおそれのある名称又は商号を使用することは禁止されます。
外国会社の公告とは?
外国会社であっても、日本で継続して取引を行おうとする場合は、
日本法人と同様に貸借対照表(外国貸借対照表)を日本において公告しなければなりません。(会社法第819条第1項)
公告の方法は登記簿に記載する必要があり、特に定めがない場合は「官報に掲載する方法」となります。(会社法第939条第2項、同第4項)
日本における代表者が外国人でも印鑑届は必要?
日本における代表者が外国人の場合、必ずしも会社の印鑑を届ける必要はありません。
ただし、日本において継続的な取引をする場合、会社の印鑑を届け出ていた方が円滑な取引が期待できます。
日本における外国人の代表者が会社の印鑑を届け出る場合は、印鑑証明書もしくはサイン証明書を利用することになります。
外国会社の登記事項って?
外国会社の登記事項は、日本における株式会社の場合と類似しています。(会社法第911条)
具体的には、外国会社は以下のような内容を登記することになります。
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なお、資本金の額は外国本国の通貨(「ドル」「ウォン」等)で登記するのが通常です。
役職については、外国本国の実情に則した名称(「執行役」「理事」等)で登記することになります。
外国会社が営業所を設置する際の必要書類は?
外国会社が日本において営業所を設置する場合、以下のような書類を準備します。
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一般には外国会社の定款や議事録などが該当します。
しかし、宣誓供述書に内容をまとめても差し支えありません。
最終的には、外国本国の言語で作成されたこれらの書類を和訳して、法務局に提出することになります。
登記の申請期限は、外国会社が日本における代表者を定め、かつ、日本に営業所を設けてから3週間以内です。(会社法第933条第1項第2号)
まとめ
以上が外国会社の概要となりますが、お分かりいただけましたでしょうか。
外国会社の登記は、日本国内の株式会社や合同会社等と異なる点が多々あります。
西宮の司法書士・行政書士今井法務事務所では、外国会社のご相談にも対応しております。
日本での継続した取引をお考えの外国会社様がおられましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。